特殊清掃

隣人が死んでるかも?不安な時に確認方法と取るべき行動

隣人が死んでるかもしれないと不安になっている女性

「最近、隣人の姿を見かけないな…」

「郵便受けが新聞やチラシでいっぱいになっている…」

「部屋から物音が全くしない…」

ふと気づいた隣人の変化に、「もしかして、何かあったのでは…?」と不安な気持ちを抱えていませんか。特に一人暮らしの方が多い現代社会では、隣人の安否が気になる状況は誰にでも起こり得ます。

その不安は、決してあなただけが感じるものではありません。

隣人の異変に気づいたとき、どのように状況を確認し、どんな行動を取るべきなのか、そして万が一の事態にどう備えるべきか。この記事では、その具体的なステップを解説します。

記事監修者プロフィール

遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。

遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)


株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井

目次

1. 隣人が死んでるかもしれない?疑うべき「サイン」

「いつもと違う」と感じる些細な変化が、実は重要なサインである可能性があります。具体的にどのような状況が、隣人の安否を疑うべきサインとなるのでしょうか。

  • 隣人の姿を長い間見かけない、気配がない
  • 郵便受けがいっぱいになっている
  • 部屋から普段聞こえる生活音(テレビ、シャワーなど)が全くしない
  • 夜になっても部屋の電気がついていない
  • 異臭がする(腐敗臭や死臭)
  • ハエやその他の害虫が異常発生している

隣人の姿を長い間見かけない、気配がない

リモートワークなどで在宅しているはずなのに全く姿を見かけない、あるいは生活音がしないなど、普段の生活パターンとの著しい変化が見られる場合です。

また、いつも停まっている自転車、窓辺に置かれている雑誌などがずっと同じ状態のままになっている場合も注意が必要です。

郵便受けがいっぱいになっている

数日分以上の広告や郵便物が溜まって溢れかえっていたり、郵便ポストが投函物で塞がってしまっていたりする状況も可能性の一つとして考えられます。

部屋から普段聞こえる生活音(テレビ、シャワーなど)が全くしない

いつもなら聞こえてくるテレビの音や話し声、シャワーの音などが、ぱったりと聞こえなくなった場合も、注意すべきサインの一つです。

夜になっても部屋の電気がついていない

普段なら明かりがついている時間帯なのに、部屋が真っ暗なままという状況も、気にかけるべきサインです。

異臭がする(腐敗臭や死臭)

「生ゴミが腐ったような臭い」や「肉の腐ったような、酸っぱい臭い」など、普段の生活では嗅ぐことのない異常な臭いが漂ってくる場合は注意が必要です。

また、「甘ったるいような、でもカメムシのように耐えられない感じ」と表現される独特な臭いを感じることもあります。

特に夏場は気温が高いため、数日で臭いが発生し始めることもあり、季節や発見までの期間によって、臭いの強さや種類は変化する可能性があります。

ハエやその他の害虫が異常発生している

自宅の窓や網戸に普段見かけないほど多くのハエが付着していたり、隣室の換気扇や窓の隙間などからハエが大量に出てきたりする状況は危険な兆候です。

ベランダや共用廊下に、ハエのサナギの殻のようなものが散乱している場合も同様です。

ハエの大量発生は、遺体の腐敗が進んでいる可能性を示す非常に強いサインと考えられます。

どれくらいの期間が目安?「10日ルール」について

一般的に、旅行や帰省などで家を空ける期間は10日以内が多いと言われています。

そのため、「10日間全く気配がない」というのは、一つの目安になるかもしれません。

しかし、これはあくまで目安です。

異臭やハエの大量発生といった強いサインがある場合は、10日を待たずに、速やかに行動を起こすことを検討すべきです。早期の対応が、万が一の事態の拡大を防ぐことにつながります。

隣人の安否確認、どうすればいい?

隣人の異変に気づき、不安を感じたとき、具体的にどのような行動を取れば良いのでしょうか。

パニックにならず、落ち着いて段階的に対応することが大切です。

ステップ0:まずはさりげなく確認(可能であれば)

本格的な行動に移る前に、ご自身で可能な範囲で、さりげなく状況を確認してみましょう。

  • 夜間に、外から隣人の部屋の電気がついているか確認する。
  • (もし見える位置にあれば)ベランダに洗濯物が干されているか、普段と変わりないかなどを見る。

ただし、これらの確認はプライバシーへの配慮を忘れず、無理のない範囲で行いましょう。

ステップ1:インターホンを押してみる

まずは、隣人の部屋のインターホンを押してみましょう。応答があれば、ひとまず安心です。

その際は、「最近お見かけしなかったので、少し心配になりまして…」などと、気遣いの言葉を伝え、驚かせてしまったことを謝るなど、失礼のない対応を心がけましょう。

もし応答がなければ、次のステップに進みます。

ステップ2:マンションやアパートの管理人・管理会社・大家さんに連絡する【最優先】

賃貸物件にお住まいの場合、まず連絡すべきは、マンションやアパートの管理人、管理会社、または大家さんです。

▼理由

  • 管理側には、入居者の安否を確認する義務があるため、適切に対応してくれます。
  • 多くの場合、このような事態に対応するためのマニュアルや手順が定められています
  • 管理会社や大家さんは、合鍵を所持しているため、状況確認が可能です(ただし、プライバシー保護の観点から、合鍵を使って安易に室内に入ることはせず、まずは外からの確認や警察への連絡を優先する場合が多いです)。
  • 隣人が病気で入院していたり、長期の旅行に出かけていたりする場合、管理側が事前にその情報を把握している可能性があります。
  • 管理側が必要と判断すれば、警察や消防などと連携して、迅速かつ適切に対応してくれます。
  • 万が一、孤独死が発生していた場合、発見が早いほど、後の原状回復費用などが抑えられるため、管理側にとっても早期対応はメリットがあります。

連絡時に伝えるべきこと:

管理会社や大家さんに連絡する際は、以下の情報を具体的に伝えましょう。

  • 安否確認をお願いしたい旨(「隣の○○号室の△△さんの安否が気になります」など)
  • 隣人から管理側へ、不在にする等の事前連絡があったかどうか(もし分かれば)
  • 現在の状況(いつから異変に気づいたか、どのようなサインがあるかなど、具体的に詳しく)

ステップ3:警察に連絡する【強いサインがある場合、管理会社が動かない場合など】

以下のような場合は、ためらわずに警察(110番または最寄りの警察署)に連絡することを検討しましょう。

どんな時に警察に連絡すべきか:

  • 異臭(腐敗臭・死臭)やハエの大量発生など、死を強く示唆するサインがある場合。
  • 管理会社や大家さんに連絡しても、すぐに対応してもらえない、あるいは連絡がつかない場合。
  • 一軒家など、管理会社が存在しない場合。

「もし隣人が無事だったら、警察沙汰にしてしまって迷惑かな…」と心配になるかもしれません。確かに、その可能性はゼロではありません。

しかし、強い疑いがある場合は、ためらわずに連絡することが重要です。

万が一の事態であれば、早期発見が救命につながる可能性も残されています。また、警察はこのような通報や相談に慣れており、状況を客観的に判断し、適切に対応してくれます。

そして、必要に応じて救急隊を要請したり、家主や管理会社の許可を得て(または緊急性が高いと判断されれば令状なしで)部屋への立ち入りを行ったりします。

【重要】自分で部屋に立ち入ったり、ドアを無理やり開けたりしない

隣人の安否が心配でも、ご自身で勝手に部屋に立ち入ったり、ドアをこじ開けようとしたりすることは絶対に避けてください。

万が一、事件性があった場合には現場の証拠を損なってしまう可能性があり、また住居侵入罪などの法的なトラブルに巻き込まれるリスクも考えられます。

必ず、管理会社や警察など、適切な機関に判断と対応を委ねましょう。

もし隣人が孤独死していた場合、あなたへの影響は?

考えたくないことですが、もし本当に隣人が孤独死していた場合、あなたにはどのような影響が考えられるのでしょうか。

事前に知っておくことで、冷静に対応できるかもしれません。

警察による事情聴取

第一発見者となったり、異変に早く気づいたりした場合、警察から簡単な事情聴取を求められることがあります。

いつ頃から異変に気づいたか、どのような状況だったかなど、聞かれたことに正直に答えましょう。

テレビドラマで見るような厳しい尋問になることはまずありませんので、落ち着いて協力しましょう。

部屋からの異臭や害虫の被害

遺体の発見が遅れた場合や、季節(特に夏場)によっては、強烈な死臭が発生し、あなたの部屋や家財道具にまで臭いが染み付いてしまう可能性があります。

また、ハエやゴキブリなどの害虫が大量に発生し、あなたの部屋にも侵入してくることもあります。

「事故物件」になるのか?

孤独死が発生した部屋自体は、不動産取引上の「心理的瑕疵物件」(いわゆる事故物件)として扱われます。

しかし、隣の部屋や建物全体が自動的に事故物件となるわけではありません(ただし、共用部分で発見された場合など、特殊なケースは除きます)。

また、近隣住民に対して、孤独死があった事実を大家さんや管理会社が積極的に告知する義務も、基本的にはないと考えられています。

補償や引っ越し費用について

残念ながら、隣室の住民が孤独死による被害(臭いや精神的苦痛など)を受けたとしても、その補償を受けられるケースは限定的で、多くの場合、十分な補償は期待できないのが実情です。

その理由として、孤独死は多くの場合、故人の直接的な過失とは見なされにくいため法的な賠償責任が生じにくいこと、また大家さん自身も特殊清掃費用や家賃収入の減少といった経済的な損害を被る「被害者」となるため、隣人への補償まで手が回らないことが多いことなどが挙げられます。

引っ越しも選択肢の一つ

異臭が取れない、害虫の発生が続く、あるいは心理的にどうしても住み続けるのが辛いという場合は、無理をせず、引っ越しを検討することも一つの選択肢です。

費用面での負担は生じますが、ご自身の心身の健康を最優先に考えましょう。

まとめ

隣人の「いつもと違う様子」に気づいたとき、不安や恐怖を感じるのは当然のことです。しかし、その不安を一人で抱え込まず、まずはマンションやアパートの管理会社、大家さんといった適切な窓口に相談することが大切です。

そして、異臭やハエの大量発生といった、孤独死を強く疑わせるサインがある場合には、ためらわずに警察に連絡しましょう。

ご自身で無理に状況を確認しようと部屋に立ち入ったりすることは絶対にやめましょう。

隣人の孤独死は、誰にとっても悲しい出来事であり、近隣住民にも少なからず影響を及ぼします。

しかし、そのような状況に直面した際には、冷静に、そして適切に行動することが求められます。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、適切な行動へ踏み出すための一助となれば幸いです。