「お母さんが入院することになって…」
「父が施設に入ることに…」
親御さんの急な入院・施設入居が決まって、頭の中が真っ白になった経験はありませんか?親の体調や今後の生活のことで頭がいっぱいなのに、病院と施設を行き来する合間に、何十年も住み続けた実家の片付けもしなければならない。
仕事も休めない、自分の家庭もある、でも親のことは放っておけない。週末に実家に帰ってみると、そこには思い出の詰まった家具や、いつか使うつもりで取っておいた物たちが、部屋中に散らばっている。
「一体どこから手をつければいいの?」
そう途方に暮れているあなたの気持ち、よくわかります。この記事では、そんな突然の片付けに直面したあなたが、効率的に実家の片付けを進められる方法をお伝えします。
片付けを先延ばしにするリスク

もしかしたらあなたは「親もいずれ退院するかもしれないし、今は様子を見よう」と考えているかもしれません。
そう思いたくなる気持ちは本当によくわかります。ただ、実家の片付けを先延ばしにすることで、想像以上のリスクが潜んでいるんです。起こりうるリスクについて、一つずつ解説していきます。
家が傷む
誰も住まなくなった家は、思っている以上に早く傷みます。新聞や雑誌が積みあがり、家具や洋服もそのまま。あらゆる家財道具を現状のまま放置していると、湿気がたまり、状況によっては早い段階でカビが発生し始めます。時にはネズミが住み着いて家中の物をかじったり、郊外ではハクビシンやアライグマが巣を作って家を荒らし害獣の被害が拡大します。食品があればゴキブリが大量発生する事も珍しくはありません。冷蔵庫の中身は腐って変色し異臭を放ちます。
放火や火災のリスクも
コンセントにつながったままの古い家電製品。人の目が届かない空き家は、火災のリスクが上がってしまいます。上記にあるように、ネズミなどは電線もかじってしまうため、害獣によって漏電から火災になる可能性も否めません。かと言って電源ブレーカーを落としてしまうと、冷蔵庫の電源が切れてしまい、中身は悲惨な状態になります。さらに空き家には放火のリスクもあり、実際に火をつけられてしまった方も居ます。
貴重品の紛失や盗難の危険
通帳や印鑑、家の権利書、思い出の品…。これらが部屋のどこかに埋もれてしまうと、いざ必要になったときに探すのが大変です。また、空き巣は常に空き家を探し、地域を巡回してチェックしています。何度か下見をして空き家だと判断すれば、空き巣はガラスを割って侵入し、あっという間に被害に遭います。空き巣被害に遭った家は家中をグチャグチャにされてしまい、無惨な状況になってしまいます。
結果、家の資産価値が下がる
放置された家は劣化が進み、いざ売却や賃貸を考えたときには、想像以上に資産価値が下がってしまっているかもしれません。片付けや手入れを後回しにすればするほど、結果的に大きな損失につながる可能性もあるのです。
例えば、メンテナンスをしていたら長持ちした家も、空き家にする事で雨漏りに気付かず、解体を余儀なくされてしまったケースも存在します。
あなた自身の心の負担が増える
「やらなきゃ」と思いながら手をつけられない状態が続くと、精神的にも大きな負担になります。親の体調のことが気がかりなのに、さらに実家のことまで考えなければならない。この二重の負担は、あなたの日常生活にも影響を及ぼすかもしれません。
だからこそ、できるだけ早めに、少しずつでも片付けを始めることが大切なんです。
片付けの前に、まずするべき準備

いきなり片づけを始めてしまうと、今後トラブルになる可能性が出てくることも。まずはきちんと準備をしてから片づけを始めましょう。片づけの前にするべき準備を解説してみます。
親の意向を確認する
実は親の意向を確認しないままの片付けは、トラブルの一番の原因になり得ます。やはりしっかりと意向を確認する事は何よりも本当に大切なことなんです。たとえ、あなたにとっては必要ない物に見えても、親にとってはひとつひとつに思い入れがある大切な物かもしれません。
入院中や施設にいる親に、まずは「どうしても残しておきたいものはある?」「処分してもいいものはある?」と優しく聞いてみることからスタートです。認知症が進んでいたり、コミュニケーションが難しい場合もあるかもしれませんが、可能な限り意向を尊重する姿勢が、後悔がない片付けにつながります。
特に、服や食器、写真、手紙などは、本人の意向とあなたの考えにミスマッチが起こりやすいです。親の気持ちに寄り添いながら少しずつ進めることが重要です。
兄弟姉妹や親族で話し合う時間を作る
「自分が長女だから」「近くに住んでるから」と、片付けを一人で抱え込もうとしていませんか?
実家の片付けは、誰かがやることではなく、家族みんなで取り組むべき問題なんです。後になって揉め事になるのはしんどいですよね。
できれば片付けを始める前に、兄弟姉妹や親族で集まって話し合いましょう。遠方に住んでいる場合は、電話やビデオ通話でも構いません。
- 誰がいつ片付けに参加できるか
- 貴重品や思い出の品の分配はどうするか
- 費用の負担はどうするか
- 業者に依頼する場合の予算は?
こういったことを事前に決めておくことで、スムーズに進められるでしょう。
必要な道具を揃えておく
ここまで準備万端で臨めば、作業効率が格段にアップします。次に必要な道具を揃えておきましょう。
用意しておきたい道具:
- 大きなゴミ袋(多めに)
- 段ボール箱・ガムテープ
- マジックペン(箱に内容を書く用)
- 軍手やゴム手袋
- カッターやハサミ
- マスク
- 掃除道具
- カメラやスマホ(記録用)
しっかり準備してから臨めば、「あれがない、これがない」と無駄な時間を使わずに済みます。
実家の片付け、何から手をつけたら良い?

ここまで準備が終わったら、いよいよ実際の片付けがスタートです。でも、部屋のあちこちに物が散らばっていたら「一体どこから手をつけたらいいの…?」と困ってしまいますよね。
こちらでは片付けの方法を順番に解説するので、一つずつ取り組んでみてください。
①貴重品や重要書類を探す
まずは貴重品と重要書類を探しましょう。今後必ず必要になるので、まずは一番に取り組みます。
探すべき貴重品・重要書類:
- 通帳・キャッシュカード・印鑑
- 年金手帳・保険証券
- 不動産の権利書・売買契約書・リフォームに関わる書類
- 契約書類(携帯電話、電気・ガス・水道など)
- 現金や貴金属
- 株券や有価証券
- パスポートや免許証
- 遺言書・エンディングノート
これらは親の寝室やリビング、仏壇の引き出し、タンスの奥などに保管されていることが多いです。見つけたら、専用の箱やファイルにまとめて、わかりやすい場所に保管しておきます。
②必要なものと不要なものを分類する
ここから本格的な片付けに入ります。部屋ごとに、物を次のように分類していきます。
- 残すもの(まだ使える、必要な物)
- 処分するもの(明らかなゴミ、壊れた物)
- 保留(判断に迷う物)
- 譲る・売るもの(状態がよく、他の人が使えそうな物)
一度に全部の部屋に手をつけず、少しずつ区切って進めるのがコツです。
判断に迷ったものは、無理に決めずに「保留」に。後日、気持ちに余裕があるときに再度考えましょう。
思い出の物は判断に時間がかかるので、まずは保留に入れておき、最後に一気に片づけるのがオススメです。
③大型家具・家電の処分を計画する
タンス、ベッド、ソファ、冷蔵庫、洗濯機など大型品の処分は、個人では難しいことも多いです。
自治体の粗大ゴミ回収を利用する場合は、事前予約が必要で、数週間待つこともあります。早めに手配しておきましょう。(自治体によりますので、市役所に事前に相談してください)
まだ使える状態なら、リサイクルショップに買い取ってもらったり、知人に譲ったりする選択肢もあります。
④公共料金や契約の整理
物の片付けと並行して、各種契約の整理も進めます。
- 電気・ガス・水道の名義変更または解約
- 固定電話・インターネットの解約
- 新聞や定期購読の解約
これらを放置していると、無駄な費用がかかり続けてしまいます。連絡先をリスト化して、一つずつ確実に処理できる準備をしていきましょう。
片付けには最低、「電気と水道」があれば大丈夫。それ以外のガスや電話などは止めてしまっても作業は可能です。
これ以外にも、今の時代だとオンライン上で登録しているサブスクなどもある可能性も。パソコンやタブレット、スマートフォンなどをチェックしてどんなものがあるか確認してみましょう。
パソコンやスマホなどにアクセスができない場合は、クレジットカードや銀行などの毎月の支払から登録しているものを見つけるのがわかりやすいです。
まずはそこから探してみましょう。
⑤思い出の品を仕分ける
思い出のものとは写真アルバム、手紙、子どもの頃の作品、それに親が大切にしていた品物などが入ります。
これらは他の人から見たら必要なく金銭的な価値はない場合が多いですが、家族にとってかけがえのないものです。兄弟姉妹で分け合ったり、デジタル化して保存したりすることを検討します。
全部を残すのは難しいかもしれません。でも、親との思い出を振り返りながらそれぞれの物を片付け先を考えるのはかけがえのない時間にもなります。
ただ、懐かしい写真が1枚出てきただけで、兄弟で昔話に花が咲いてしまい手が止まってしまうのもよくある話です。そのためとても時間がかかってしまう事があるので、感情に振り回されそうなものは、あくまで最後に対応しましょう。
挫折しないために!片付けを効率的に進めるコツ

実家の片付けは、想像以上に体力も気力も時間も使う作業になります。途中で挫折しないための、具体的なコツをお伝えします。
完璧を目指さない
まず最初に「一日で全部片付けよう」なんて思わないでください。何十年もかけて積み上がった物を、一日や二日で片付けるのは不可能です。
全体的なスケジュールを考え、そこから小さい目標を決めていきましょう。「今日は部屋の片付け」「今日は粗大ごみの予約をする」と小さいステップで少しずつ進めたら良いんです。
思い出に浸りすぎない
古い写真やアルバムを見つけると、つい手が止まってしまいますよね。思い出を振り返ることも大切ですが、それに浸りすぎると作業が進みません。
「思い出タイム」は作業後のご褒美として取っておきましょう。
一人で抱え込まない
辛いとき、判断に迷ったとき、一人で抱え込まないでください。
兄弟姉妹に相談する、友人に話を聞いてもらう、それだけでも気持ちが楽になります。
しんどくなったらこういう気分転換をする!と自分でルールを決めて取り組むのも良いですね。
「業者に頼る」という賢い選択

ここまで読んで、「やっぱり自分一人では無理かも…」と思った方もいるかもしれません。
その場合はプロの力を借りましょう。業者に頼むことでいくつかのメリットがあるんです。解説してみますね。
片付け業者に依頼するメリット
メリット1:時間を大幅に削減できる
自分で全ての作業をすると数ヶ月もかかるものが、業者に頼むとたった1日で片付けてくれます。かなり物が多いお宅でも、僅か数日で終わらせてくれます。仕事や家事でなかなか時間が取れない場合、驚くほど効率的に片付けを進めることができます。
「月末までに終わらせなければいけない」など、期限が決まっていて片付けが必要な場合は特に安心です。
メリット2:重い物も安全に運搬
大型家具や家電製品の運び出しは、ケガのリスクや腰を痛める原因にもなります。せっかく自分で頑張った結果、病院に通うことになったり仕事を休むことになったら元も子もありません。
プロなら運び方のコツを知っているので、安全にかつ適切に処分してくれ、安心して任せられます。
メリット3:生前整理や遺品整理のノウハウがある
経験豊富な業者は、貴重品の見落としを防いだり、効率的な仕分け方法を知っています。自分で全て調べて探すよりも効率が良いんです。
よくわからないまま自分で全て探すより、プロの意見を参考にして最短で見つける方が気持ちも楽になりますよね。
メリット4:精神的な負担が減る
思い出の詰まった実家の片付けは、想像以上に心と時間に負担がかかります。プロに任せると、その時間を使ってあなたは親御さんのお見舞いに行ったり、残された時間を大切にできます。
自分だけのためというより、親のためにも・・と考えるとプロに頼むのも良いですよね。
メリット5:金銭的にお得になる
業者に頼むとお金がかかると思う方が多いかもしれませんが、それは一概には言えないんです。なぜなら、片付けに数か月かかることでその分の家賃や光熱費、分譲マンションでは管理費・修繕積立金が余分にかかる可能性も。もし家を売ったり賃貸に出す場合は、それだけで損失の可能性もあるんです。
「自分でやれば費用はかからない」と言うのは間違いではありませんが、あなたの時給に換算すれば、とても大きな金額になってしまいます。
本来、思い出に浸りながら1つずつゆっくり進めるのがあるべき姿かとは思いますが、実家を丸ごと1件片付けるには、相応の時間と労力がかかりますので、ある意味合理的な判断をする事も必要かも知れません。
早く片付けをすることで結果的に合計の支出が安くなる場合もあるので、要チェックです。
業者選びのポイント
ただし、業者選びは慎重にしなければなりません。残念ながら、中には悪質な業者も存在します。次のチェック項目を参考に、業者を選んでみてください。
- 複数の業者から見積もりを取る(3社程度がオススメ)
それぞれどういうサービスを行っているか、違いを見比べてみましょう。
また作業を依頼する場合には、家に業者を立ち入らせる事になります。ですから会社の代表者が、きちんとホームページに顔を出しているかどうかも重要なチェック項目です。
- 契約前に必ず現地見積もりをしてもらう ←Aの場所に移動
電話やメールで出してもらった見積りと現地で見た見積りだと金額に差が出ることも少なくないんです。だからこそ、気になった場合にはまずはしっかりとした見積もりを出してもらいましょう。
また、問い合わせをしてみたら「今日契約しないと安くならない」などと急かす業者には要注意です。本当に信頼できる業者は、あなたの状況を聞いて、都合に合わせて丁寧に対応してくれます。
- 料金体系が明確か確認する
最初に提示された値段で依頼したら、作業後に追加料金を請求してくる業者もあるんです。後から片付け費用を追加されたりしないか、しっかりと見積時に確認し、契約書の内容も確認しましょう。
- 口コミや評判をチェックする
口コミが一番わかりやすいですよね。実際のお客さんの声を見て検討してみてください。
そもそも口コミが悪い業者は、見積もりをしてもらう対象にもしてはいけません。
いそがしいあなたのために
「業者に頼むのはお金がもったいない」と感じる方もいるでしょう。
でも、先ほども話したように、あなたの時間、体力、そして心の余裕。これらもまた、お金では買えない大切な資源です。
何より片付けにあまりに時間を使ってしまうと、親との残された時間に影響が出ることも。
また、無理をして体を壊したり、仕事に支障が出たりすれば、結果的にもっと大きな損失になるかもしれません。
費用対効果を冷静に考えて、プロの力を借りることを前向きに検討してみてください。
まとめ:あなたのペースで、後悔のない片付けを
実家の片付けは、人生の中でもとても大きな出来事です。大切な親との思い出がある家を片付けることは、ただの「物の整理」ではありません。
時には思い出に浸って片付けが進まなかったり、涙が出て辛くなることもあるかもしれません。「この時は楽しかったな」「もっと一緒の時間を大切にすればよかったな」と良いことも悪いことも浮かんでくるかもしれません。
だからこそ、思い出の品は最後に、まずは必要な事から淡々と進めていきましょう。
大切なのは、一人で全てを行おうとしないこと。
家族と協力したり、友人に相談したり、そしてプロの力を借りてみる。これらはすべて、あなたと親御さんにとって大切な選択なんです。
完璧な片付けを一気にする必要はありません。ただ、あとから「もっとああすればよかった」と後悔しないように、できる範囲で丁寧に向き合っていきましょう。
実家の片付けを通して、親への感謝の気持ちが浮かんでくる人も少なくありません。大変な作業だからこそ、その先には新しい未来が待っています。
あなた自身の事も大切にしながら、一歩ずつ進んでいってくださいね。

記事監修者プロフィール
遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。
遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)
株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井







