私たちの生活の中で大切にされてきたひな人形や仏壇。長年家族を見守り、心の拠り所となってきたこれらの品々は、単なる「モノ」以上の存在です。
しかし、ライフスタイルの変化や住環境の変更などにより、やむを得ず手放さなければならない時がやってきます。
そんな時、「どうやって処分すればいいのだろう」「供養は必要なのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問が浮かぶことでしょう。
この記事では、ひな人形と仏壇の適切な処分方法について、それぞれの特徴や費用、手順を詳しく解説します。大切なものを丁寧に手放すためのガイドとして、ぜひ参考にしてください。

記事監修者プロフィール
遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。
遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)
株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井
雛人形の対処法
雛人形は、女の子の健やかな成長と幸せを願う象徴として、多くの家庭で大切に飾られてきた日本の伝統的な人形です。
子どもの成長や住まいの変化などにより、雛人形を手放す時が来たとき、どのような選択肢があるのでしょうか。
1. 神社やお寺での供養(人形供養)
【概要】
多くの神社やお寺では、役目を終えた人形に対して「人形供養」を行っています。これは、人形に宿ると考えられてきた魂を鎮め、感謝の気持ちを込めてお別れをするための儀式です。一般的には、お経をあげた後、お焚き上げ(焼却供養)を行います。
【費用】
5,000円~10,000円程度が相場です。ただし、寺社によって料金設定は異なります。
【手順】
- 供養を希望する神社やお寺に事前に連絡し、受付時間や必要な手続きを確認する
- 直接持ち込むか、郵送で送付する(多くの寺社では郵送対応も行っています)
- 供養料を支払い、僧侶や神職による読経やお焚き上げを行ってもらう
メリット
- 感謝の気持ちを表現できる
- 精神的な区切りをつけやすい
- 文化的・宗教的な観点から適切な方法とされている
デメリット
- 費用がかかる
- ガラスケースは別途処分が必要な場合がある
- 事前の連絡や手続きが必要
【注目の寺社】
- 祐徳稲荷神社:「神社のお焚き上げ」サービスとして全国からの郵送に対応し、送料も神社負担
- 長福寿寺:3ヶ月もの間丁寧に読経供養した後、「日本唯一の人形専用の火葬炉」でお焚き上げを行う
2. 家庭ゴミとして処分する
【概要】
お住まいの自治体のルールに従って、一般の家庭ゴミとして処分することも可能です。ひな人形は主に木や紙、布などで作られているため、多くの自治体では可燃ゴミとして扱われます。
【費用】
ゴミ袋代程度(自治体のルールによる)
【手順】
- 自治体の分別ルールを確認する(大型のものは粗大ゴミ扱いになる場合があります)
- 心理的な抵抗がある場合は、白い紙や布で丁寧に包み、感謝の気持ちを込めて塩(お清めの塩)を少量振りかける
- 指定の日時・場所に出す
メリット
- 手軽で費用が安い
- 特別な手続きが不要
デメリット
- 心理的な抵抗を感じる方も多い
- 大型のものは粗大ゴミ扱いで別途手続きが必要
- 素材によっては分別が必要
3. 売却や寄付を検討する
【概要】
状態の良い雛人形であれば、リサイクルショップやネットオークション、フリマアプリなどで売却したり、必要としている方に譲ったりすることも可能です。
【費用】
売却の場合は収入になる可能性があります
【手順】
- 雛人形の状態を確認し、写真を撮る
- リサイクルショップやオンラインプラットフォームに出品する、または譲渡先を探す
- 譲渡や寄付をする場合は、事前に厄払いをしてから手渡すことが推奨されています
【適した譲渡先】
- 親戚や知人で女の子がいる家庭
- 保育園や幼稚園、児童館
- 介護施設
メリット
- リユースにつながる環境に優しい選択
- 状態が良ければ収入になる可能性がある
- 必要としている人に喜ばれる
デメリット
- 売却できるとは限らない
- 譲渡先を探す手間がかかる
4. 不用品回収業者に依頼する
【概要】
手間をかけずに雛人形を処分したい場合は、不用品回収業者に依頼する方法も便利です。特に、セットが大きくて運び出すのが大変な場合や、他の不用品もまとめて処分したい場合に適しています。
【費用】
3,000円~(回収量や業者による)
【手順】
- 複数の不用品回収業者に見積もりを依頼する
- 訪問日時を決め、回収してもらう
メリット
- 手間がかからない
- 自宅まで回収に来てくれる
- 他の不用品もまとめて処分できる
デメリット
- 費用がかかる
- 信頼できる業者選びが必要
処分方法 | 費用目安 | 向いている人 |
---|---|---|
神社やお寺での供養 | 5,000円~10,000円 | 丁寧に感謝の気持ちを表したい方 |
家庭ゴミとして処分 | ゴミ袋代程度 | 手軽に処分したい方、費用を抑えたい方 |
売却や寄付 | 収入の可能性あり | 環境に配慮したい方、再利用を望む方 |
不用品回収業者に依頼 | 3,000円~ | 手間をかけたくない方、大型セットをお持ちの方 |
仏壇の対処法
仏壇は、ご先祖様の霊が宿る場所として、日本人の生活において非常に重要な役割を果たしてきました。そのため、仏壇を処分する際には、感謝の気持ちとともに、宗教的な儀式を行うことが重要視されます。
1. 「魂抜き」(閉眼供養)の重要性
仏壇を処分する前に、まず知っておくべき重要なポイントは「魂抜き」または「閉眼供養」と呼ばれる儀式の必要性です。これは、仏壇に宿っているとされるご先祖様の魂を抜き、単なる物に戻すための儀式で、多くの仏教宗派において必須とされています。
注意: 浄土真宗においては仏壇に魂が宿るという考えがないため、「魂抜き」の儀式は行われず、「遷仏法要」という別の儀式が行われます。
この「魂抜き」または「閉眼供養」を行わずに仏壇を処分すると、故人や先祖への敬意を欠くことになるとされ、宗教的・文化的に不適切とされています。まずはこの儀式を行うことを前提に、処分方法を検討しましょう。
2. 菩提寺に依頼する
【概要】
日頃お世話になっている菩提寺がある場合は、まず菩提寺に相談することをおすすめします。菩提寺によっては、「閉眼供養」を行ってもらい、そのまま仏壇を引き取って処分してくれる場合があります。
【費用】
1万円~10万円程度(お布施という形で支払う)
【手順】
- 菩提寺に連絡し、仏壇の処分について相談する
- 「閉眼供養」の日時を決める
- 供養の後、仏壇を引き取ってもらえるか確認する
- 引き取りが難しい場合は、他の処分方法を検討する
メリット
- 丁寧な供養をしてもらえる
- 宗教的に最も適切な方法とされる
- 精神的な安心感が得られる
デメリット
- 費用が不確定(お布施のため)
- 防災や環境への配慮から引き取りを断られる場合がある
- 菩提寺が遠方の場合は不便
3. 仏壇・仏具店に依頼する
【概要】
仏壇を販売している仏壇・仏具店でも、古い仏壇の引き取りサービスを行っているところが多くあります。特に新しい仏壇の購入と同時に依頼すると、処分費用が安くなることが多いようです。
【費用】
2万円~8万円程度
【手順】
- 仏壇・仏具店に連絡し、古い仏壇の引き取りについて相談する
- 「閉眼供養」の代行も可能か確認する
- 引き取り日を決め、料金を支払う
メリット
- 手続きがスムーズ
- 「閉眼供養」から処分までを一貫して依頼できる場合が多い
- 新しい仏壇を購入する場合は割引が適用されることもある
デメリット
- 菩提寺への依頼より費用が高い場合がある
- 店舗によってサービス内容が異なる
4. 粗大ゴミとして処分する
【概要】
「閉眼供養」を行った後の仏壇は、宗教的には「もの」となるため、自治体の粗大ゴミとして処分することも可能です。
【費用】
500円~2,000円程度(自治体による)
【手順】
- 必ず「閉眼供養」を先に行う
- 自治体の粗大ゴミ受付センターに連絡し、回収の手続きをする
- 指定された日時・場所に仏壇を出す
メリット
- 費用が比較的安い
- 手続きが簡単
デメリット
- 自分で運び出す必要がある
- 大きな仏壇の場合は困難
- 心理的な抵抗がある方も多い
- 地域によっては仏壇の回収を行っていない場合もある
5. その他の処分方法
仏壇処分の専門業者に依頼する
専門業者は仏壇の取り扱いに慣れており、宅配便を利用した回収サービスを提供している場合もあります。中には「閉眼供養」を代行してくれる業者もあります。
リサイクル業者・買取店に依頼する
比較的新しい仏壇や、価値のある唐木仏壇などの場合は、リサイクル業者や買取店に買い取ってもらえる可能性もあります。状態や種類によって買取価格は大きく異なります。
処分方法 | 費用目安 | 向いている人 |
---|---|---|
菩提寺に依頼する | 1万円~10万円(お布施) | 宗教的に正しい方法を重視する方 |
仏壇・仏具店に依頼する | 2万円~8万円 | 新しい仏壇を購入予定の方 |
粗大ゴミとして処分 | 500円~2,000円 | 費用を抑えたい方(要閉眼供養) |
専門業者に依頼する | 業者による | 手間をかけたくない方 |
リサイクル・買取 | 買取価格による | 状態の良い価値ある仏壇をお持ちの方 |
まとめ
ひな人形や仏壇といった、長年家族と共に過ごしてきた大切なものを手放す際には、単に「捨てる」のではなく、感謝と敬意を持って適切に処分することが大切です。
ひな人形の処分方法
- 神社やお寺での供養(人形供養)
- 家庭ゴミとしての処分(できれば清めの塩などで簡易供養を)
- 売却や寄付
- 不用品回収業者への依頼
仏壇の処分
特に重要なのが「魂抜き」または「閉眼供養」という儀式です。この儀式を行った後に:
- 菩提寺に依頼する
- 仏壇・仏具店に依頼する
- 粗大ゴミとして処分する
- 専門業者や買取店を利用する
どのような方法を選ぶにしても、長年にわたり家族を見守り続けてくれたこれらの品々への感謝の気持ちを忘れずに、丁寧にお別れすることが大切です。そうすることで、物を手放す際の心の整理もつき、新たな一歩を踏み出すことができるでしょう。
最後に
宗派や地域によって異なる慣習やルールが存在することもあるため、不安な場合は菩提寺や地元の神社、お寺に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、より適切な方法で大切なものとのお別れができるはずです。