自分の世話を放棄して通常の生活が送れなくなるセルフネグレクトは、高齢者だけでなく若者の間でも発生している問題です。
セルフネグレクトは孤独死をしてしまうこともあるため、早急に解決しなければなりません。
本記事では、若者の間でセルフネグレクトが発生する理由や、陥りやすい人の特徴などについて解説します。
自身や家族、友人が「セルフネグレクトかも」と悩んでいる人は参考にしてください。
記事監修者プロフィール
遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。
遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)
株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井
セルフネグレクトは若者の間でも発生
セルフネグレクトは認知症から患うことがあるため、人によっては高齢者が陥るものと考える人がいます。
しかし、セルフネグレクトは高齢者に限った問題ではなく、若者の間でも発生している問題です。
セルフネグレクトに陥っている若者の数は報告書がないためはっきりしていません。
しかし、セルフネグレクトと関係が深い孤独死や引きこもりの数から、若者の間でもセルフネグレクトが増加していると推測されます。
例えば、自殺が原因で孤独死をした人のうち26.3%が20代を占めています。
孤独死はセルフネグレクトの末に起きることがあるため、数値が高いほどセルフネグレクトも多いと考えられるでしょう。
また、引きこもりの数は年々増加しており、2022年の調査によると15〜64歳の引きこもりの数は推計146万人といわれています。
引きこもりの末にセルフネグレクトに陥る人も多いので、引きこもりの数が増えるほどセルフネグレクトの数も増えると考えられるでしょう。
これらの結果から、セルフネグレクトは高齢者に限ったことではなく、若者の間でも発生している問題といえます。
セルフネグレクトに陥りやすい若者の特徴
若者の間でも発生しているセルフネグレクトですが、どのような人が陥りやすいのでしょうか。セルフネグレクトに陥りやすい若者の特徴は、主に次の3つです。
- 周りに助けを求められない人
- インターネットに依存している人
- めんどくさがりの人
なぜこれらの人がセルフネグレクトに陥りやすいのか、詳しい理由を見ていきましょう。
周りに助けを求められない人
問題を抱えている人のなかには、さまざまな考えから周囲に助けを求められない人がいます。
しかし、周囲に相談ができないと問題を解決できないストレスや不安から心を病み、精神疾患を患ってセルフネグレクトに陥ってしまうのです。
周りに助けを求められない人の特徴としては、プライドが高い人や遠慮がちな人などが挙げられます。
もし、これらの特徴を抱えていたら注意しましょう。
インターネットに依存している人
インターネットに依存している人は現実逃避をしていることが多く、外出しなくなりセルフネグレクトを招いてしまいます。
インターネットやオンラインゲームに依存している人のなかには、現実でつらいことがあり、現実逃避をしている人が少なくありません。
現実から逃げていると次第に現実を直視する外や部屋の外に出ることが減っていき、引きこもりになることがあるのです。
引きこもりになると、身だしなみに気を遣ったり食事がおろそかになったりします。次第に通常の生活さえままならなくなり、セルフネグレクトに至ってしまうのです。
めんどくさがりの人
めんどくさがりの人にとっては、家事や身だしなみを整える行為でさえ面倒に感じてしまいます。すると、次第に手が遠のいていき、セルフネグレクトに至ることがあるでしょう。
例えば、めんどくさがりの人は料理をしたりお風呂に入ったりすることさえ、面倒に感じて後に回すことがあります。
多少なら問題ないのですが、どんどん後に回していくと部屋の中が次第に荒れていき、手がつけられない状態になってしまうのです。
この状態になるとめんどくさがりの人は性格も相まって、自力で元の状態に戻すのは不可能でしょう。そのため、セルフネグレクトに至ってしまうのです。
若者がセルフネグレクトに陥る原因
セルフネグレクトに陥りやすい若者の特徴をあげましたが、そもそもどのような原因でに陥ってしまうのでしょう。若者がセルフネグレクトに陥る原因は、主に次の3つです。
- 核家族化
- インターネットの普及
- 経済的な困窮
なぜこれらのことでセルフネグレクトに陥るのか、詳しい内容を見ていきましょう。
核家族化
核家族化が進んだことで人間関係の希薄化が進み、社会から孤立してセルフネグレクトに陥ることがあります。
かつての日本では三世帯以上がひとつの家で過ごすことは珍しくありませんでした。
大勢で暮らすと人と接する機会が多く、コミュニケーション力が培われるといったメリットがあります。また、気が合う人も作りやすく、相談事ができる相手もいました。
しかし、配偶者とその子どもだけで暮らす核家族化が進むと家庭内で接する人数が減り、コミュニケーション力を培う機会がなくなったのです。
また、同時に相談できる相手を作る機会も減りました。
そのためコミュニケーション力の低下や相談できる相手がいないことから、人間関係の気迫を招き、社会から孤立してセルフネグレクトに至ってしまうことがあるのです。
インターネットの普及
インターネットが普及したことでコミュニケーション力が低下し、人と接する機会が減ってセルフネグレクトに陥るケースがあります。
現代では、インターネットが普及し、SNSを通じて顔が見えない人と交流ができるようになりました。
しかし、インターネット上のコミュニケーションと対面のコミュニケーションは、視覚から得られる情報などの違いがあります。
そのため、インターネットだけで交流をしていると対面のコミュニケーション力が培われないのです。
対面のコミュニケーション力がないと、直接人と会うことに抵抗を覚えてしまいます。
そして、自宅に引きこもりインターネット上だけで交流し、セルフネグレクトに陥ってしまうケースがあるのです。
インターネットの普及が悪いわけではありませんが、行き過ぎたインターネットの利用はセルフネグレクトを招くでしょう。
経済的な困窮
経済的に困窮しているとバランスが取れた食事はおろか、病気になっても通院できずに身体機能が衰えてセルフネグレクトにつながってしまいます。
日本の貧困率はここ数年高い数字を記録し、2018年時点では相対的貧困率が15.7%を記録しています。
また、追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で解雇される人も多く、直近ではさらに貧困率が上がっているでしょう。
貧困は高齢者や母子家庭に限った問題ではなく若者にもいえる問題です。
若者の間でも生活が苦しいあまり生活費を切り詰めて、不健康な生活を送っている人がいるでしょう。そのような生活を続けていると病気になる可能性がありますが、病気になっても貧困から通院できません。
その結果、セルフネグレクトに陥ってしまうことがあるのです。
貧困はセルフネグレクト以外にも自殺や餓死などたくさんの問題を抱えています。早急に解決すべき問題のうちのひとつでしょう。
セルフネグレクトのチェックリスト
本記事を読んでいる人のなかには、自身や家族、友人などが「セルフネグレクトに陥っているかも」と、不安を抱えている人がいるでしょう。
そこで、セルフネグレクトに陥っているのか確認するチェックリストを紹介します。チェックが多いほどセルフネグレクトの可能性が高いので、まずは確認してみてください。
- 家の中にゴミが散乱している
- 何か月もゴミを放置しており異臭を放っている
- ポストの中が郵便物であふれかえっている
- 金銭管理ができず公共料金などの支払いが滞っている
- 長期間お風呂に入っていない
- 身だしなみに気を使わなくなった
- ほとんど外出しない
- 無理な節約をしている
- 病気になっても通院しない
- 他人とかかわるのを拒否する
セルフネグレクトの予防策・解決法
もし、セルフネグレクトに陥りやすい若者の特徴に当てはまっていたり、セルフネグレクトの可能性が高かったりしたら、どのような対策を取ればいいのでしょうか。
ここでは、セルフネグレクトの予防策や解決法を紹介します。それぞれの重要なポイントをまとめて簡潔に紹介するので、参考にしてください。
セルフネグレクトの予防策
若者がセルフネグレクトに陥らないための予防策は次の通りです。
- 積極的に人とかかわる機会を作る
- インターネットをやり過ぎない
- 家事代行サービスを導入する
- 生活保護や生活困窮者自立支援制度を利用する
- 副業などを初めて収入を増やす
先述した通り、セルフネグレクトは人間関係の希薄化が進むと陥ってしまいます。
そのため、ボランティア活動に参加したり社会人サークルに参加したりして、積極的に人とかかわる機会を作ることが大切です。
また、その際はインターネット上の交流ではなく、現実で人とかかわりを持つようにしましょう。
また、部屋の中がゴミであふれかえっているときは、家事代行サービスや清掃業者に依頼するのがおすすめです。部屋がキレイになれば、心境にも変化が現れるでしょう。
もし、生活が困窮していたら生活保護や生活困窮者自立支援制度を利用して生活を立て直すことが大切です。
もし、制度を利用するほどでないなら、副業などを始めて収入を増やすといいでしょう。
セルフネグレクトの解決法
もし、若者がセルフネグレクトに陥っていたら、次の解決法があります。
- 市の相談窓口に適切な支援団体を紹介してもらう
- 家事代行サービスや清掃業者を導入する
- 精神疾患を抱えている場合は病院で治療を行う
これらの解決法を行うなかで一番大切なのが、まずは相手の気持ちや意思を尊重することです。
セルフネグレクトに陥っている人は心に傷を負っていることが少なくありません。
そのような人へ一方的に解決法を押し付けては、ますます相手を傷つけてしまうでしょう。まずは相手の話を聞き、どうしたいのか聞くことが大切です。
また、なかにはセルフネグレクトの自覚がない人もいます。その場合、相手に現状を伝えて、まずはセルフネグレクトに陥っていることを自覚させましょう。
相手の意思や気持ちを聞けたなら、紹介した解決法から適切なものを選んでください。
支援を受けながら生活を立て直す場合は、市の相談窓口へ相談するのがおすすめです。
とにかく部屋をキレイにしたいなら家事代行サービスや清掃業者の導入、精神疾患が重症の場合は病院での治療を検討しましょう。
まとめ
若者のセルフネグレクトは、人間関係の希薄化や行き過ぎたインターネットの利用から陥ってしまいます。一度陥ると自力で立て直すには難しいため、周囲のサポートが必要です。
もし、セルフネグレクトに陥っていたらまずは相手から話を聞いて、どのようにしたいのか意思や気持ちを聞きましょう。その上でどのように生活を立て直していくのか、話し合って決めることが大切です。