特殊清掃

孤独死で警察が遺体を引き取る流れとその間にやることを解説

予期せぬ別れ、中でも「孤独死」という現実は、遺されたご遺族にとって計り知れない衝撃と深い悲しみをもたらします。

突然の出来事に動揺し、何から手をつければ良いのか途方に暮れてしまう方も少なくありません。

特に、警察が関与する状況では、その後の流れやご自身のやるべきことが分からず、不安は募るばかりでしょう。

この記事では、万が一、ご家族が孤独死され、警察が遺体を引き取ることになった場合の流れ、その間にご遺族が準備すべきこと、そして費用について、心を込めて解説いたします。

不安な時だからこそ、確かな情報を知ることが、次の一歩を踏み出すための小さな灯火となるはずです。

目次

遺体を引き取った警察が行うこと

孤独死(孤立死)のように、誰にも看取られずに亡くなられた場合や、事件性の疑いがある場合、まずは警察が介入し、故人様の尊厳を守りつつ、必要な調査を行います。

その具体的な流れを見ていきましょう。

孤独死現場の現場検証・家宅捜査

警察官が現場に到着すると、まず状況を確認し、事件性の有無を慎重に判断します。

部屋の状況、遺体の状態などを詳しく調べ、写真撮影なども行われます。これは「現場検証」と呼ばれ、亡くなられた原因や状況を明らかにするための重要な初動捜査です。

同時に、故人様の身元確認や、ご遺族を探すための手がかり(住所録、携帯電話など)がないか、室内を調査する「家宅捜査」も行われることがあります。

ご遺族にとっては辛いことですが、正確な状況把握のために必要なプロセスです。

遺体の検視

現場検証と並行して、あるいはその後、医師による「検視」が行われます。

検視とは、医師が遺体の外表を確認し、死因や死亡推定時刻などを医学的に判断することです。

多くの場合、警察署に遺体を搬送した後、警察協力医(監察医制度のある地域では監察医)によって行われます。

この検視により、明らかな病死なのか、あるいは事件や事故の可能性があるのかが判断されます。

遺体の解剖を行うケースもある

検視だけでは死因が特定できない場合や、事件性が疑われる場合には、「解剖(司法解剖または行政解剖)」が行われることがあります。

司法解剖は犯罪捜査の一環として行われ、費用は公費で賄われます。

一方、事件性は低いものの死因究明が必要な場合に行われるのが行政解剖(承諾解剖とも呼ばれる)で、この場合はご遺族の承諾が必要となり、費用負担が発生することもあります。

解剖を行うか否かは、検視の結果や状況に応じて警察や医師が判断します。

死体検案書の発行

検視または解剖によって死因が特定されると、医師によって「死体検案書」が作成されます。

これは、故人様の死亡を法的に証明する重要な書類であり、後の死亡届の提出や火葬許可証の申請、保険手続きなどに必要不可欠です。

この書類の発行には費用がかかります。

遺体の引き渡し

事件性がなく、身元が確認され、死因が特定されると、警察からご遺族へ遺体の引き渡しに関する連絡が入ります。

通常、遺体は警察署の霊安室や、提携している葬儀社などに一時的に安置されています。

この連絡を受けたら、ご遺族は遺体を引き取りに行くことになります。

警察署に出向く際に必要な持ち物

警察から連絡を受け、遺体の確認や引き取り、事情聴取などで警察署へ向かう際には、以下のものを準備しておくと慌てずに済みます。

予期せぬ状況で、場合によっては長時間滞在したり、そのまま近隣で宿泊したりする可能性も考慮しておくと安心です。

  • 身分証明書・印鑑: ご自身の身元を確認するため、また書類手続きに必要な場合があります。運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどと、認印(シャチハタ不可の場合あり)を用意しましょう。
  • 防寒着: 警察署内や霊安室は、季節によっては冷えることがあります。特に精神的なショックを受けているときは体温調節がうまくいかないことも。カーディガンやストールなど、羽織れるものが一枚あると安心です。
  • スマホの充電器: 関係各所への連絡や情報収集にスマートフォンは不可欠です。バッテリー切れに備え、充電器やモバイルバッテリーを持参しましょう。
  • 着替えの服など宿泊セット: 遠方から駆けつける場合や、手続きが長引く可能性を考え、最低限の着替えや洗面用具など、簡単な宿泊セットがあると心強いです。

警察が遺体を引き取った際に遺族が負担する費用

警察の捜査自体は公的なものですが、それに伴う一部の費用はご遺族の負担となる場合があります。

想定される主な費用は以下の通りです。

搬送料

ご遺体が発見された場所から警察署や安置場所まで搬送するための費用です。

警察が手配した搬送業者に対して支払います。警察が手配する遺体搬送の費用相場は、一概には言えませんが、一般的に2万円〜5万円程度となることが多いようです。

検死費用

検視を行った医師に対して支払う費用です。金額は状況によって異なります。

行政(承諾)解剖

前述の通り、司法解剖は公費ですが、死因究明のために行われる行政解剖(承諾解剖)については、ご遺族に費用負担が生じる場合があります。実施前に説明があるはずですので、よく確認しましょう。

遺体保管料

警察署の霊安室や提携先の安置施設などに遺体を保管してもらうための費用です。

多くの場合、一定期間(例:24時間)を超えると日割りで費用が発生します。引き取りまでに時間がかかるほど、費用は加算されます。

死体検案書発行料

医師が作成する死体検案書の発行手数料です。これも後の手続きに必須の書類ですので、必ず受け取り、費用を支払います。

これらの費用は、合計すると決して少なくない金額になる可能性があります。

突然の出費に備え、ある程度の現金を準備しておくか、支払い方法について事前に確認しておくとよいでしょう。

警察が遺体を引き取っている間に準備するべきこと

警察が遺体を調査し、引き渡しを待つ間は、ご遺族にとって落ち着かない時間かもしれませんが、この間に進めておくべき大切な準備があります。

  1. 関係者への連絡: 親族や特に親しかった友人、故人様の勤務先など、訃報を伝えるべき関係者に連絡を取ります。精神的に辛い作業ですが、協力をお願いできる人を見つけるためにも重要です。
  2. 必要書類の収集: 後の手続き(死亡届、相続、保険など)に必要となる可能性のある書類(故人様の身分証明書、健康保険証、年金手帳、銀行通帳、不動産権利証、遺言書など)の所在を確認し、集め始めます。
  3. 葬儀社の検討・連絡: 遺体の引き取り後の流れをスムーズにするため、依頼する葬儀社を検討し、事前に連絡を入れておくと良いでしょう。状況を説明し、遺体の引き取り・搬送について相談しておきます。
  4. 特殊清掃業者の検討・連絡: 孤独死の場合、発見までの時間経過によっては、お部屋の汚染や臭いが深刻な状況になっている可能性があります。通常のハウスクリーニングでは対応できないため、「特殊清掃」の専門業者への依頼が必須です。警察の現場検証が終わるタイミングを見計らって作業に入れるよう、事前に信頼できる業者を探し、相談しておくことを強くお勧めします。私たちのような遺品整理・特殊清掃の専門業者にご相談ください。
  5. 遺言書の有無の確認: 故人様が遺言書を遺しているか確認します。公正証書遺言以外の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になることもあります。

警察から遺体の引き渡されたら行うこと

警察から遺体引き渡しの連絡を受けたら、いよいよご遺族が主体となって動く段階に入ります。

葬儀社へ遺体搬送の依頼する

事前に連絡しておいた葬儀社に、警察から遺体を引き取る日時と場所を伝え、ご遺体の搬送を依頼します。

葬儀社の寝台車が、警察署や安置場所まで故人様をお迎えにあがり、ご自宅や斎場など、指定の安置場所まで搬送してくれます。

特殊清掃業者へ立ち入り許可が出たことを連絡する

警察の現場検証が終了し、お部屋への立ち入り許可が出たら、速やかに特殊清掃業者に連絡します。

特に夏場などは、汚染や臭いの拡散が急速に進むため、一刻も早い対応が望まれます。

業者は専門的な知識と技術で、除菌、消臭、汚染物の除去、そして必要に応じて遺品整理まで行います。

各種手続きを行う

ご遺体を引き取り、安置したら、並行して様々な行政手続きや届出を進める必要があります。主なものとしては、

  • 死亡届の提出: 死体検案書を添えて、市区町村役場に死亡届を提出します(通常、葬儀社が代行してくれる場合が多いです)。これにより火葬許可証が交付されます。
  • 葬儀の準備: 葬儀社と打ち合わせを行い、葬儀・火葬の日程や内容を決定します。
  • 関係各所への連絡: 年金事務所、健康保険、生命保険会社、銀行、クレジットカード会社、公共料金(電気・ガス・水道)、携帯電話会社など、故人様に関する契約やサービスについて、解約や名義変更の手続きを行います。
  • 相続手続き: 相続人の確定、相続財産の調査、遺産分割協議など、必要に応じて専門家(弁護士、司法書士、税理士など)のサポートも検討します。

これらの手続きは多岐にわたり、時間と労力を要します。一人で抱え込まず、親族や専門家と協力しながら進めていきましょう。

特殊清掃業者の選び方

孤独死の現場は、精神的にも衛生的にも、ご遺族だけで対応するのは困難です。適切な特殊清掃業者を選ぶことは、故人様の尊厳を守り、ご遺族の負担を軽減し、お部屋を元の状態に近づけるために非常に重要です。以下の点を参考に、信頼できる業者を選びましょう。

チェック項目確認内容
実績と専門性孤独死現場の特殊清掃に関する豊富な実績があるか、専門的な知識や技術を持っているかを確認します。
明確な見積もり作業内容と料金が明記された、詳細な見積もりを提示してくれるか。追加料金が発生する可能性についても、事前に説明があるかを確認しましょう。
専門的な機材と薬剤消臭・除菌効果の高い専門的な機材(オゾン発生器など)や薬剤を使用しているか。
許認可・資格産業廃棄物収集運搬業許可など、必要な許認可や関連資格を保有しているか。
遺品整理への対応特殊清掃と合わせて遺品整理も依頼できるか。ワンストップで対応できる業者だと、ご遺族の負担が軽減されます。
丁寧な対応とプライバシーへの配慮ご遺族の気持ちに寄り添い、丁寧な説明を心がけてくれるか。近隣への配慮やプライバシー保護を徹底してくれるかも重要です。

複数の業者から見積もりを取り、サービス内容や対応を比較検討することをお勧めします。

まとめ

孤独死という悲しい現実に直面されたとき、警察による遺体の引き取りとその後の流れは、ご遺族にとって大きな不安要素となります。しかし、どのような手続きがあり、ご自身が何をすべきかを事前に知っておくだけでも、心の負担は少し軽くなるはずです。

警察の調査、検視、そして遺体の引き渡し。その間にも、ご遺族には費用の準備や関係者への連絡、葬儀社や特殊清掃業者の手配など、やるべきことがあります。

特に、故人様が遺されたお部屋の原状回復には、特殊清掃という専門的なサポートが不可欠です。

突然のことで、何から手をつけていいかわからない、精神的に辛くて動けない、という場合もあるかと思います。どうか一人で抱え込まず、ご親族や信頼できる専門家にご相談ください。私たち遺品整理・特殊清掃のプロフェッショナルは、ご遺族のお気持ちに寄り添いながら、故人様の尊厳を守り、新たな一歩を踏み出すためのお手伝いをさせていただきます。どんな些細なことでも、まずはお気軽にご相談いただければ幸いです。