親が高齢になると実家の片付けに頭を抱える人は少なくありません。実家が散らかっていると親の健康をおびやかすうえ、親の死後に遺族が行う遺品整理の負担は計り知れないでしょう。
本記事では、実家の片づけを行うタイミングや片付けの流れについて解説していきます。実家の片付けで悩んでいる人は、参考にしてください。
記事監修者プロフィール
遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。
遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)
株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井
実家の片づけを行うタイミング
実家の片づけを行うタイミングは、大きく分けて次の2つに分けられます。
- 生前に行う生前整理
- 死後に行う遺品整理
どちらとも始める時期に決まりはありませんが、中心となる人物に違いがあります。詳しい内容について解説していきましょう。
生前に行う生前整理
生前整理は親が生前のうちに自身が主体となって実家の片づけを行います。
物を捨てる判断は親が行うので、片付けが不得意な親の場合は、なかなか片付けが進まないかもしれません。
しかし、生前に親が実家の片づけを行っておけば、遺族が行う遺品整理の負担を軽減できるでしょう。
また、親が生前整理を進めることで、自分の人生を振り返ったり人生の軌道を見直したりできます。
終焉へ向けてより有意義な人生を過ごせるようになるため、親にとってもメリットが大きいでしょう。
死後に行う遺品整理
遺品整理は遺族が主体となって実家の片づけを行います。
遺品整理は相続や思い出の品をめぐり、トラブルになることも少なくありません。しかし、遺族が遺品整理を行うことで気持ちに区切りをつけられるメリットがあります。
ただし、遺品整理は準確定申告や相続税の申告などの期限があり、間に合うように進めなければなりません。仕事や育児で遺族が忙しい場合は、かかる負担が大きいでしょう。
関連記事:遺品整理を行うタイミングとは?千葉県の遺品整理業者がお教えします
生前整理と遺品整理のどちらがおすすめ?
生前整理と遺品整理は主体となる人物が異なるため、一概にどちらがおすすめとはいえません。
しかし、メリットの多さでいえば生前整理が挙げられます。
遺品整理は遺族の手で処分することで気持ちに区切りをつけられる一方、相続や遺品をめぐってトラブルが多いのも事実です。
さらに、実家の状態によっては費用も時間もかかり、遺族が肉体的にも精神的にも追い詰められる可能性があるでしょう。
その点、生前整理は親へ負担がかかるものの、親子で行えば負担は分担できます。また、実家がきれいになることでより健康的になり、生活の質も向上するでしょう。
実家の片づけを行うときの流れ
実際に実家の片づけを行うときには、どのような流れで進めていけばいいのでしょうか。大まかな流れは下記の通りです。
- 親へ相談(ご存命の場合)
- 自力で行うか業者へ依頼するか選択
- スケジュールの作成
- 費用の相談
具体的にどのようなことを行うのか、詳しい内容を解説していきます。
親へ相談(ご存命の場合)
親がご存命の場合は、必ず事前に相談してください。
実家にある物はあくまでも親の所有物であり、子どもの物ではありません。相談もなく勝手に始めてしまうと、親子といえど失礼にあたるでしょう。
もし、親への切り出し方が分からなければ、片付けるメリットや散らかっているデメリットを伝えるのがおすすめです。具体的には、下記の内容を伝えるといいでしょう。
片付けるメリット |
散らかっているデメリット |
家の中が清潔になる 物につまづいて転倒することがなくなる 物の場所を把握できるようになる 孫や親戚が訪問しやすくなる 片づけを通して人生を見直せる |
物が散乱していて転倒のおそれがある 孫や親戚が訪問しづらい 不健康で生活の質が低下する 火災のきっかけになる 散らかりすぎるとご近所とトラブルになる |
なお、遺品整理の場合は始める前にほかの遺族や親族と相談することが大切です。そのときには、遺品の選別方法や費用の分担を決めておくと、トラブルを避けられます。
自力で行うか業者へ依頼するか選択
実家の片付けを行うのが決まったら、自力で行うのか業者へ依頼するのか選択します。どちらにしようか悩んでいる人は、下記の表を参考に選ぶといいでしょう。
メリット |
デメリット |
|
自分で片付ける |
出費を抑えられる 自分のペースで作業できる |
手間や時間がかかる 専門知識に欠ける |
業者に依頼する |
短期間で終わる サービスが充実している |
ある程度の費用が発生する 一定数の悪徳業者がいる |
実家の荷物が少ない人や自分たちのペースで作業をしたい人は、自分で片付けるのをおすすめします。
一方、下記の項目にあてはまる人は業者へ依頼するのがおすすめです。
- 実家がゴミ屋敷化している
- 処分する荷物が大量にある
- 実家が遠方にあって通えない
- 遺品整理が初めてで自信がない
業者への依頼は費用が発生するものの、手間や時間をかけずに作業を終えられるのが大きな魅力です。上記の項目に当てはまらない人でも、お金に余裕があれば業者へ依頼するといいでしょう。
関連記事:実家の片付けは一人っ子でも大丈夫?タイミングとポイントについて解説
スケジュールの作成
次に、おおよそのスケジュールを立てていきましょう。
自力で片付ける場合は、いつまでに終わらせるか期限を設けた後、逆算してどの部屋をいつまでに片付け終えるのか細かいスケジュールを決めていきます。
このときに無理なスケジュールを立てるとストレスになってしまうので、ゆとりを持つようにしてください。
業者に依頼する場合も同様に、期限を設けてから逆算して見積もりや業者選びの時期を決めていきましょう。
費用の相談
おおよそのスケジュールを立てたら、費用について相談しましょう。
自力で片付ける場合は大きな費用はかかりません。一方、業者へ依頼する場合はある程度の費用がかかるので、捻出方法や負担割合を相談しておくことが大切です。
親がご存命なら親と、親が亡くなっていれば遺族同士で相談してください。
なお、業者へ依頼したときの費用相場は下記のとおりです。
お部屋の間取り |
作業人数目安 |
料金 |
1R/K |
1名 |
¥25,000~ |
1DK |
2名 |
¥60,000~ |
1LDK |
3名 |
¥100,000~ |
2DK |
3名 |
¥120,000~ |
2LDK |
4名 |
¥150,000~ |
3DK |
5名 |
¥180,000~ |
3LDK |
5名 |
¥200,000~ |
4LDK |
6名 |
¥250,000~ |
※簡易清掃費・養生作業費・仕分け、梱包費・搬出作業費・運搬車両費・廃棄物処理費・現場出張費含まれています
※消費税、家電リサイクルに掛かる料金は含まれておりません
なお、遺品整理の費用は実家の立地や荷物の量などによって変わるので、参考程度にしてください。
関連記事:遺品整理は見積もりが重要!見積もりの取り方と費用を抑えるコツを紹介!
親と一緒に実家を片付けるときの注意点
親子で実家の片づけを行うときはいくつかの注意点があります。特に次の2点について、気を付けましょう。
- 処分の判断は両親が行う
- 物を捨て過ぎないようにする
なぜ、注意しなければならないのか、詳しい内容について解説していきます。
処分の判断は両親が行う
親子で実家を片付ける場合、処分の判断は親が行ってください。
実家の物にどのような思い入れがあるかは、親しか知りえません。
子どもにとって価値がないように見える物でも、親にとっては大切な品である場合があります。
そのような品を勝手に処分すると、一気に仲が険悪になってしまうでしょう。
また、実家にある物は親の所有物であり、子どものものではありません。そもそも勝手に処分するのは失礼にあたるので、処分の判断は親に任せましょう。
物を捨て過ぎないようにする
物を捨て過ぎるとかえって寂しい思いをさせてしまうため、捨て過ぎないように注意してください。
片づけると部屋がすっきりして気持ちがいいと思う人も多いでしょう。
しかし、行き過ぎると閑散として、寂しい思いをさせてしまうかもしれません。
また、大切な物や趣味の物まで捨ててしまうと、その後の人生に楽しみを見いだせなくなるケースもあります。
物を捨て過ぎていた場合、処分の判断を行う親はなかなか気付けません。
子どもが注意を払い、捨て過ぎているようなら声をかけてあげましょう。
遺品整理で実家を片付けるときの注意点
遺品整理で実家を片付けるときにも注意点があります。特に次の2点はトラブルへ発展する可能性があるので、注意してください。
- 始める前に遺言書やエンディングノートを確認する
- 独断で遺品を捨ててはいけない
それぞれの詳しい内容について解説していきましょう。
始める前に遺言書やエンディングノートを確認する
遺言書やエンディングノートには遺品について記載してある可能性があるため、遺品整理を行う前に必ず確認してください。
遺言書やエンディングノートには故人の意向が残されており、遺品の処分方法や希望する譲渡先が記されている場合があります。
遺品はもともと故人の所有物なので、なるべく故人の意思を尊重しましょう。
遺品整理を終えた後では手遅れになってしまうため、必ず遺品整理を始める前に確認することが大切です。
独断で遺品を捨ててはいけない
遺品への思い入れは人によって異なるため、独断で遺品を処分してはいけません。
自分にとって思い入れがない遺品でも、ほかの遺族にとっては思い出の品である可能性があります。
そのような遺品を勝手に処分すると、「形見分けしてもらおうと思っていた」といわれ、トラブルへ発展する可能性があるでしょう。
一度処分してしまうと取り返しがつかないので、処分する際は必ずほかの遺族に相談してから処分してください。
実家の片づけを行うときのコツ
実家の片づけは時間も手間もかかるので、途中でやめたくなります。そのようなときは、次の3つのコツでモチベーションを上げてみてください。
- 小さなことから始める
- 目的を定める
- 一時保管場所を作る
具体的にどのようなことをするのか、詳しく解説していきます。
小さなことから始める
実家の片づけは範囲が広く終わりが見えづらいため、モチベーションが続きません。
そのようなときは、達成しやすいゴールを作り、小さなことから始めるのがおすすめです。
達成しやすいゴールなら達成感を得やすく、モチベーションが上がります。
具体的には、靴箱の中を整理する、不要な食器を処分するなど、小さなスペースの片付けから始めるといいでしょう。
目的を定める
片付けの目的を定めると、片付けの動機が明確になってモチベーションを維持しやすくなります。
実家の片づけを続けていると、次第に何のために片付けているのか分からなくなり、モチベーションが下がってきます。
しかし、目的が定まっていればゴールのビジョンが描きやすいので、モチベーションを維持できるでしょう。
例えば、生前整理で片付けているなら終活の意味も兼ねて、人生の振り返りを目的にするのがおすすめです。
遺品整理なら、遺品を手放すことで気持ちに区切りをつけるのを目標にすると作業が捗るでしょう。
一時保管場所を作る
一時保管場所を作っておくと、捨てるか悩むときのストレスを軽減できます。
実家の片づけを進めていくと、どうしても捨てるか悩む物がでてくるでしょう。
一度迷い始めると手が止まってしまううえ、人によって悩む時間にストレスを感じます。この状態が続くと、片づけを続けるのが億劫に感じるでしょう。
このような事態に陥らないためにも、一時保管場所を作り悩んだ物はそこへ置いておくのがおすすめです。
時間が経てば考えが変わり、処分するのかすぐ判断できるかもしれません。
まとめ
実家の片付けを行うタイミングは、大きく分けて生前整理と遺品整理のときです。
生前整理では親を主体に片づけを進めていき、遺品整理では遺族が主体となって片づけを進めていきます。
実家の荷物が少なければ自力で片付けられますが、時間や手間を惜しむようなら業者へ依頼するのがおすすめです。
業者へ依頼すると費用がかかりますが、効率よくスムーズに片づけを終えられます。