遺品整理を行うなかで意外と扱いに困るのが着物です。着物は「大量に出てきて困っている」「価値が分からなくて処分していいのか分からない」と、声が上がることがあります。
本記事では、遺品整理で出てきた着物の扱い方を紹介したうえで、残す着物を選ぶコツを紹介します。
「資産価値の高い着物を処分してしまった」と後悔しないように、着物を処分する際の参考にしてください。
記事監修者プロフィール
遺品整理士歴10年、これまでに5,000件以上の遺品整理や特殊清掃に携わる。手がけた遺品整理で発見された貴重品のうち、お返ししたタンス預金の合計だけでも3億3千万円にも上り、貴金属などの有価物を含むと5億円近くの金品を依頼者の手元に返して来た。
遺品を無駄にしないリユースにも特化。東南アジアへの貿易を自社にて行なっており、それに共感を覚える遺族も非常に多い。また不動産の処分も一括で請け負い、いわるゆ「負動産」を甦らせる取り組みにも尽力して来た。
一般社団法人ALL JAPANTRADING 理事
一般社団法人家財整理相談窓口会員
一般社団法人除染作業管理協会理事
宅地建物取引士(日本都市住宅販売株式会社代表取締役)
株式会社RISE プロアシスト東日本
代表 仲井
遺品の着物の扱い方
遺品整理で出てきた着物の扱い方は、おおまかに分けて下記の3つがあります。
- 処分する
- 売却する
- 再利用する
これらの扱い方のなかでも、さらに方法が細かく分かれているので、それぞれを見ていきましょう。
処分する
着物にカビやシミができていて着られない場合は、処分せざるを得ません。処分の方法は主に次の2つです。
- ごみとして処分する
- 業者へ依頼する
着物をゴミとして処分する場合、地域のごみのルールを守ることが大切です。
着物は地域によって資源ごみなのか、可燃ごみなのか異なります。地域のごみのルールを良く調べてからごみへ出すようにしましょう。
もし、着物の量が多ければ費用は発生しますが、着物の処分を遺品整理業者や不用品回収業者などへ依頼してもいいでしょう。
遺品整理業者は遺品整理の際に出た遺品の買取や処分を行っています。
着物の処分だけでなく遺品整理も行ってくれるので、時間がかかる作業をスムーズに終えられるでしょう。
不用品回収業者はさまざまな不用品を回収してくれる業者です。着物だけでなくほかの遺品もまとめて処分できるので、面倒なごみの仕分けをせずに済みます。
売却する
もし、着物の状態が良ければ売却を検討してみてもいいでしょう。売却の方法は主に次の4つが挙げられます。
- 買取業者へ依頼する
- フリマアプリやフリマサイトに出す
- ネットオークションに出す
- 買取している遺品整理業者へ依頼する
売却のなかでも一般的な方法が、買取業者への依頼です。
買取業者のなかには着物専門の買取業者もおり、着物の価値を正しく把握して買取してくれます。
相場より低い価格で買取されることはないでしょう。
一方で、フリマアプリやフリマサイト、ネットオークションを利用すると買取業者に出すより高く売却できることがあります。
自分で出品する手間はありますが、買取業者に出して買取価格に納得がいかなければ利用をしてみてもいいでしょう。
また、先述しましたが、遺品整理業者のなかには遺品の買取もしてくれる業者がいます。
買取した価格は作業料金から引いてくれるので、お得に遺品整理も買取も任せたい人におすすめです。
再利用する
思い入れがあり処分や売却するのが心苦しいなら、再利用をするのがおすすめです。再利用の方法は主に次の4つが挙げられます。
- 自身がもらう
- 家族・親族・知人に譲る
- 寄付に出す
- リメイクする
再利用のなかでも一般的な方法は自身がもらったり家族や親族、知人に譲ったりすることです。
ただし、高価な着物は資産価値が高いことで相続税や贈与税が発生するおそれがあります。
もらったり譲ったりする着物の選定はよく注意してください。
もし、着物を着る人がいなければ寄付を検討してみてもいいでしょう。
着物の寄付はNPO法人や市民団体、大学などが受付けています。自分自身に合った寄付先を選び、次の人へ着てもらいましょう。
着物の一部が汚れている場合には、汚れているところを除いて小物やバッグへリメイクするといいかもしれません。
自分でリメイクするのが難しければ、着物をリメイクしてくれる業者もいるので、利用してみるといいでしょう。
着物を遺品整理するときの手順
着物の処分方法を紹介しましたが、まずは遺品整理することが大切です。着物を遺品整理するときは下記の手順で進めていきましょう。
- 着物の選別をする
- 取っておく着物の手入れをする
- 捨てる着物の処分方法を決める
どのようなことをするのか具体的な内容を見ていきます。
着物の選別をする
まずは取っておく着物と捨てる着物を選別をすることから始めます。着物を選別するポイントとして、下記の4つの着物は残しておくといいでしょう。
- 遺言状やエンディングノートに記載がある着物
- 思い入れのある着物
- ほかの誰かが着る可能性がある着物
- 落款や証紙がある着物
遺言状やエンディングノートには故人の意向が記されています。故人の意向は優先されるので、記されている着物は処分してはいけません。
また、落款や証紙がある着物は資産価値が高い可能性があります。誤って処分すると遺産分割のときにトラブルへ発展する可能性があるので、捨てないようにしましょう。
上記の着物以外は捨てる着物へ分けても問題はありません。
しかし、もし判断に迷うようなら取って置いて、四十九日法要など親族が集まる機会に相談することがおすすめです。
取っておく着物の手入れをする
取っておく着物を決めたら、ていねいに手入れをして保管しましょう。手入れの順番は下記のとおりです。
- 風通しのいい場所で半日ほど陰干しをする。日ごろから手入れをしていたら半日ほど、しばらく手入れをしていなかったら1〜2日ほど干すのがおすすめ。
- 干している間にシミやカビをチェックする。整理中には気付かなかったシミやカビを見つけられる。
- 着物を取り込んで畳む。もし、着物を包んでいるたとう紙が古いようなら、新しいものへ交換する。
捨てる着物の処分方法を決める
取っておく着物の手入れと並行して、捨てる着物の処分方法を決めましょう。
処分の方法は先ほど紹介した2つの処分方法がおすすめです。
処分する着物の量や費用、業者に任せたい内容によって、自分でごみに出すのか、業者へ処分を依頼するのか決めるといいでしょう。
着物を遺品整理するときの注意点
着物を遺品整理していくなかで、いくつか注意点があります。特に下記の2つの注意点は気を付けないとトラブルへ発展する可能性があるでしょう。
- 遺言書やエンディングノートがないか確認する
- 処分する前に家族や親族へ確認を取る
なぜトラブルへ発展する可能性があるのか、詳しい内容を紹介していきます。
遺言書やエンディングノートがないか確認する
遺品整理を始める前に必ず遺言状やエンディングノートがないか確認してください。
遺言状やエンディングノートは故人の意向が記された法的な書類です。
相続にまつわるさまざまなことが記載されており、なかには資産価値の高い着物の相続について記されている可能性もあるでしょう。
もし、記載がある着物を処分してしまっては、金銭的なトラブルへ発展しかねません。
遺品整理や相続分割を円満に終わらせるためにも、必ず遺言状やエンディングノートの有無を確認しましょう。
処分する前に家族や親族へ確認を取る
独断で着物を選定して処分してしまうと、家族や親族とトラブルへ発展する可能性があるため、処分をする前に家族や親族へ確認を取りましょう。
家族や親族のなかには遺品の着物へ思い入れがある人もいます。
故人が亡くなった後、そのような思い入れのある品を心のよりどころにする人もいるでしょう。
それなのに独断で大切な品を処分してしまっては、その人の心を傷つけてしまいます。
着物の選別が終わったらすぐに処分せず、四十九日法要など親族がそろうタイミングで処分して良いか確認しましょう。
遺品整理を始めるタイミング
遺品の着物の扱い方や手順について解説しましたが、そもそもどのタイミングで遺品整理を始めればいいのか悩む人もいるでしょう。
遺品整理を始めるタイミングは、下記の4つがあります。
- 故人の葬儀が終わった後
- 諸手続きが完了した後
- 四十九日法要
- 気持ちが落ち着いた後
もっとも理想的なのは気持ちが落ち着いた後ですが、賃貸物件の契約期限や相続税の申告期限などがあります。
これらの期限までには間に合うように遺品整理を進めなければなりません。
もし、どうしても自身で遺品整理を進めることが大変ならば、遺品整理業者へ依頼することがおすすめです。
業者に任せることで、自身の心を痛めずに迅速に遺品整理を終えられます。
費用は発生しますが、着物を買取に出せば作業費から引いてくれるので、お得に遺品整理を終えられるでしょう。
遺品整理業者の選ぶポイント
遺品整理業者への依頼をおすすめしましたが、なかには悪徳業者がいます。悪徳業者へ依頼しないためにも、下記のポイントを意識して業者を選ぶようにしましょう。
- 現場で見積もりをしてくれる業者を選ぶ
- 複数の業者から見積もりを取る
- 利用した人の口コミを確認する
どのようにすればいいのか、それぞれの具体的な内容を解説していきます。
現場で見積もりをしてくれる業者を選ぶ
遺品整理業者を選ぶときは見積もりをとることが大切ですが、なかでも現場へ来て見積もりを出してくれる業者を選びましょう。
遺品整理は家の大きさや遺品の量、エレベーターの有無などで費用が変わります。
見積もりの段階で現場を見ない業者は様子が分からず、当日になって追加請求してくるおそれがあるでしょう。
あとから追加請求されて費用が高額にならないためにも、事前に現場で見積もりをしてくれる業者を選ぶことが大切です。
また、その際にも当日の追加請求があるのか、どのような条件で追加請求が発生するのか、はっきりさせましょう。
複数の業者から見積もりを取る
遺品整理業者から見積もりを取るときは、ひとつの業者だけでなく複数の業者から見積もりを取ることが大切です。
ひとつの業者からしか見積もりを取らないと、業者が提示した価格が適正なのか分かりません。
遺品整理の相場を知るためにも、複数の業者から見積もりを取って比べることが大切です。
なお、複数の業者から見積もりを取った際、相場から外れた安い金額を提示する業者には注意してください。
安い金額を提示する業者は価格を売りにして、追加請求で帳尻を合わせることがあります。
価格だけで決めず、業者の態度やサービス内容で決めましょう。
利用した人の口コミを確認する
優良な業者に見えても実際に利用してみないと分かりません。そのようなときは、実際に利用した人の口コミを確認しましょう。
確認する口コミサイトは、業者の比較サイトやGoogle Mapなどの偏りがないサイトがおすすめです。
これらの口コミサイトなら良い口コミだけでなく、悪かった点を指摘した口コミもあります。
業者のホームページへ記載している口コミは良い口コミしか載せていないことが多いので、必ず偏りがないサイトで口コミを確認しましょう。
まとめ
着物を遺品整理するときは、まず始める前に遺言状やエンディングノートの有無を確認することが大切です。
確認した後は、思い入れのある着物や誰かが着る可能性のある着物、落款・証書がある着物は取っておくようにしましょう。
また、着物を売却するときは遺品整理業者を利用することがおすすめです。
遺品整理業者に任せれば遺品整理を代行してもらえるうえ、不要なものを買取してくれます。
量が多い着物や価値が高い着物はまとめて買取してもらい、その分は作業費から引いてもらいましょう。